中心命題 — 行政の自動化ではなく、機会の配備
HIME Global Public Capacityは、世界の公共部門を起点とする国際制度の構想です。目的はAIで公共職員を減らすことでも、同じ勤務時間により多くの仕事を詰め込むことでもありません。必要な公共業務をより短時間・高品質・低負荷で終え、生まれた時間を学習・研究・休息・文化・家族・地域・国際交流へ返すこと。そして世界の競争の軸を「長く働き、多く処理する競争」から「必要な仕事を早く終え、よく学び、よく休み、よく生きる競争」へ移すことです。
三つの層 — W100・Lex50・HIME
この構想は三つの層でできています。W100(このサイト)は、職員が何を知り、何を学び、何を実行できるかを記述する知識の座標です。Lex50は、その業務がどの権利・義務・権限・手続・例外・救済に基づくかを記述する法の座標です。HIMEは、職員・AI・設備・正本・権限・証拠・承認・成果を接続する実行基盤です。三者を分けたまま接続することで、「AIに技術的にできること」と「制度上許されること」を区別できます。
時間配当 — 果実は時間で返す
AI導入で生まれた余裕を、人員削減や業務量の積み増しだけで回収してはならない——これがこの構想の中核規範です。生まれた時間の配分を導入前に定め、半分を職員自身へ返し(労働時間の短縮・休暇・余暇)、四分の一を開発・研究・交流・学習・継承に、残る四分の一を組織の裁量(サービス品質・災害時の余力など)にあてることを「時間配当」として制度化します。賃金は労働時間短縮によって下げません。公共部門の時短実証(アイスランド2015-2019、英国2022ほか)は、時間を返しても品質が維持できることを示しています。
公共技術者 — 採用できないなら、育成する
世界中の地方政府や小規模な公共組織は、AIエンジニアを市場から採用できません。そこで発想を替えます。公共実務を知る職員を、技術者へ育成する。全職員が、自分の業務を目的・入力・判断・出力・例外へ分解し、AIへ委任できる部分と人間が裁定すべき部分を分け、出力を検証し、工程として共有する能力を勤務時間内の教育で身につけます。評価は点数競争ではなく「何を安全に設計・実行・監査できるか」の到達度で行い、W100座標に記録します。記録は職名や組織名に依存しないため、国境を越えて通用します。
夜はAIが働き、朝は人が裁く
24時間稼働は人を24時間働かせるためのものではありません。文書収集・分類・照合・翻訳案づくりのような「案」で終わる処理を機械が夜間・休日に進め、人間の残業と休日勤務を減らすためのものです。外部送信・支出・許認可・正本の確定など法的効果を持つ処理は、必ず人間の承認後にのみ実行されます。AIは権限主体ではありません。翌朝、職員の前にあるのは未処理の山ではなく、AIが下ごしらえを済ませ、人間が裁定すべき案件の一覧です。
卒業 — 公共部門は学校になる
この構想では、公共組織を「入って学び、実務で成果を残し、社会へ卒業していく」教育・研究・制作機関として設計し直します。十分に学んだ職員が民間・研究・地域・国際協力へ移ることは損失ではなく、公共部門による人的資本形成と社会への技術移転です。卒業者は到達度記録と成果物の制作者記録を持って出て、再採用・兼業・共同研究で公共側へ戻る道も制度化します。
格差 — 偶然による減価を縮める
同じ能力を持つ人が、生まれた国・地域・言語・所属組織の設備・制度への距離によって、所得も機会も行政サービスの質も大きく異なる——この不合理を縮めることが最終目標です。機器・AI・教育・保守を一体の国際共同調達で配備し、参加組織は機種やモデルではなく職員数と業務量に応じた能力階級を選ぶだけにします。目標は結果の一律化ではなく、本人の能力や権利が偶然によって不当に失われない経路の保障です。
一人職場を、規格の外に置かない
公共の現場には、一人で回さなければならない持ち場が必ずあります。小規模な自治体の情報担当、出先機関の単独配置、専門職の一人職場、災害で分断された拠点。こうした持ち場を「規模が足りないので対象外」とすれば、最も支援を必要とする場所が制度の外に残ります。そこで単独運用を例外ではなく正式な構成として設計します。線引きは一つです。設備は縮めてよい。構造は縮めてはならない。共有の計算機も、二重化も、24時間運用も、規模に応じて省いてかまいません。しかし、判断の根拠がどの原本のどの版のどこにあるのか、誰が承認したのか、記録が後から消せないこと、AIが止まっても業務が続くこと——これらは一人でも省けません。一人であることは、住民が説明を求め、異議を申し立てられなくてよい理由にはならないからです。
一人では、起案する人と承認する人を別にできません。この不足は三つの方法で補います。起案と裁定を同じ日に行わないこと(翌朝の自分は、前日の自分と同じ判断をしません)。広域の共同機関による定期的な抜き取り確認を受けること。そしてAIの役割を、案を書く側と反証する側に分けること。ただし三つ目は補助にすぎず、AIは人の代わりに承認する存在ではありません。人間の第二の目は、内部に作れないなら外部から借ります。単独運用は認めますが、孤立運用は認めません。
一人の持ち場では、引き継ぐ相手がその場にいるとは限りません。だから継承を人ではなく記録に置きます。原本・工程・評価の基準・承認の履歴が、担当者の手元ではなく組織の側にあること。後任者や応援職員が着任した日に、何を引き継ぐべきかを記録から特定できること。担当者の頭の中と端末の中にしか存在しない仕事は、一人職場では事故として扱います。なおこの構成は「いずれ人が増えるまでの仮の姿」ではありません。一人職場が一人であることには、人口規模・専門性の希少さ・地理という構造的な理由があります。解消を前提にすれば、その持ち場は永久に「まだ整っていない場所」として扱われ続けます。
段階
| 段階 | 内容 |
|---|---|
| 第0段階 | 基本構想 — 用語・原則・権限・時間配当の合意 |
| 第1段階 | 限定実証 — 10人規模の部署 × 2〜3か国 |
| 第2段階 | 通常業務 — 文書・翻訳・調達・会計・統計・法令照合 |
| 第3段階 | 24時間運用 — 夜間ジョブと翌朝の人間裁定 |
| 第4段階 | 教育・卒業 — 全職員教育・到達度・人材循環 |
| 第5段階 | 国際共同体 — 同職種職員の日常的な共同制作 |
| 第6段階 | 民間波及 — 調達条件・互換基盤の開放 |
位置づけ
本ページは構想の公開版(要約)です。設計は構想・制度・技術・教育・評価・リスクを一体の設計書として整備中で、事実・推定・提案を区別し、数値には根拠または仮定を付す方針で書かれています。正本は日本語です。
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